わたしのみち

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財布も携帯も何もかも失くして6キロ歩いて断念した

昨夜も暑かったね。ムシムシして外にいてもあまり風を感じなくて、すごく苦痛な夜だった。苦痛な理由はそれだけじゃなかった。あまりの自分のバカさ加減が情けなく、それで余計にイライラとモヤモヤが増したんだ。

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昨日は午後から友達と会っていて、夜の9時ごろ解散ということになった。私も近くまで車で来ていたので、駐車場近くまで友達の車で移動した。駐車場まで行ってもらうと彼女の帰宅方向と向きが違ったので、彼女が帰りやすい道沿いで降ろしてもらった。バイバイと見送り自分の停めた駐車場に向かう道中、車のキーがないことに気が付いた。

 

・・・キーどころかバッグごとない・・・

 

しまった!友達の車に忘れた!!

と走って別れた道まで戻ってみたけど当然友達の車は影も見えなかった。

 

キーがないと車に乗れない。電話して戻ってもらおう!あ・・・バッグがないと財布も携帯もない。ポケットには小銭もない。公衆電話を探す前に何もできない状態にため息をつくしかなかった。「は!?何で?何手ぶらで降りてんの、私!?」自分のバカさ加減を呪わずにいられなかった。

自宅まで歩けば15キロはあるだろうか。2時間で着くだろうか?そんな思いを持ちながら仕方なく私は歩いた。自宅への徒歩での一番の近道を考えながらズンズン歩いた。ズンズン歩きながら考えた。自宅方向とはちょっとズレるけど、別の友達の家に寄ってみよう。そこで電話を借りて家に電話して誰かに迎えに来てもらうか、数千円借りてタクシーに乗るか。そこに希望を持ってズンズン歩いた。

他の案も考えた。もしかしたら車で帰った友達がバッグを忘れてることに気づいて戻ってくれるかもしれない。全く別のルートを歩いたら会えないかもしれないから、彼女が車で帰るであろう道と別の友達への自宅と自分の自宅への最適ルートをズンズン歩いた。

当然ウォーキングに適した服装ではない。ムンムンした外気とジーンズに足は動きにくい。先を急いでるから知らぬ間に前傾姿勢で歩いているのか腰が痛くなる。辛い、腰が、足が・・・喉がカラカラでコンビニで水を求めたくなる。けど小銭すら持っていない。自分を呪うしかない。

 

*****

 

友達は戻ってこない。目の前には別の友達のマンションが見えてきた。心の中でマンションに向けて手を伸ばしながら「あとわずかだ」と言い聞かせズンズン歩く。そこまでいけば何とかなる光が見えていた。

6キロほど歩いただろうか。1時間は掛かってないだろう。荒れた息を落ち着かせエントランスのインターフォンを押す。出ない。部屋の灯りはついている。もう一度インターフォンを押す。出ない。テレビを見ながら電気をつけたまま寝てしまっているんだろうか?彼女の普段の生活を思い返しながらそんなことを思った。3度目のインターフォンを押そうかと思った。けどやめた。女性一人で深夜に鳴るインターフォンは気味悪く思っているかもしれない。窓からの光を何度も振り返りながら友達のマンションを後にした。「不気味な思いをさせてたらごめん!」と思いながら・・・窓から様子を伺って私に気づいてくれないかなと期待しながら・・・。

友達のマンションを離れ、自宅まで歩くしかないのかと覚悟をしたとき思い出した。「ここから5分のところで弟が店をやっている」何で真っ先に思い浮かばなかったんだろう!そしたら友達に不気味な思いもさせずに済んだのに!相手が実の弟なら話は早い。「あ~ホントにバカだな~私は」と思う気持ちと裏腹に足取りは軽くスキップしたいほど最高の解決策を見つけた気分だ。

 

「定休日」

 

無情にも店先にかかるその札が私に「残念でした~!」と告げていた。万策尽きた。もう自宅まで歩く気力はなかった。自分の体力不足を悔やんだ。バカさ加減を呪った。

歩道の柵にもたれて休憩しながら考える。「交番に相談するか」。交番では交通費を貸してもらえると聞いたことがある。いやいや、貸してくれないよと聞いたこともある。電話を借りられるとも聞いたことがあるが借りられないとも聞いたことがある。一体何が本当なんだろう・・・それよりも駅を挟んで向こうにある交番にすら行く気力がわかなかった。考えて、考えて、考えて、最後に唯一思いつく案を実行するべく、重い足取りで駅に向かった。

 

*****

 

私が立つと目の前のドアが開いた。私はその中に身を乗り出して聞いた。「バッグを失くしてしまってお金を持ってないんです。家まで着けばきちんとお支払いするので乗せてもらえませんか?」

 

タクシー乗り場に着いたら3台のタクシーが客待ちをしていた。いつも乗る、いつも見る普通のタクシーだが、いつもより黒光りして見えた。黒光りして高級そうに見えるそのタクシーは「お金のないやつはお断り」と威嚇しているように見えた。お金もないのに乗車しようとするなんて・・・。恥を忍んで声をかけたつもりだった。だが運転手から返ってきたのは「どうぞ、どうぞ!大丈夫だよ」という言葉だった。ふかふかのシートと涼しく快適な車内、優しい運転手の声。「助かった!」本気でそう思った。

「財布失くしたの?」と聞かれたことからことの経緯を歩いてきた勢いのまままくし立てるように話した。「そら災難やなぁ。弱り目に祟り目やなぁ。」と運転手は同情してくれた。「でもね、お金なくても乗れるのがタクシーやからね。電車やバスはそうはいかんからね。」と優しい言葉をくれた。もちろんお金がないという客を乗せるのは商売として不安ではあるだろう。本当に払ってくれるかどうかわからないのだから。だけど私にそんな言葉をかけてくれたのは私の歩き疲れた様からなのかもしれない。内心「じゃぁ元の場所からタクシーに乗ればよかったかな」とも思ったけど、すぐ打ち消した。しんどかったけど歩いてきたからこの運転手さんに出会えて助けられたんだろうと思った。

喉がカラカラというか口内がベタベタで気持ち悪かった。自宅までタクシーに乗れたのだから我慢すればよかったのに、我慢できない程私は乾いていた。「おじさん、申し訳ないんだけど200円貸してもらえませんか?コンビニに寄って水買いたい。」そんな非常識なお願いにも「いいよ、いいよ~そらこんな暑い中歩いてたらなぁ」と道中の店に車を停めてくれた。小走りに店内に入り水を得た私はシートに深く腰掛けて一気に飲んだ。

 

*****

 

6キロを1時間かけて歩いた。残り自宅までの6キロをタクシーは10分程で走った。たった10分だったけど、その時間は私にとって貴重な体験となった。「おじさん、私もおじさんと似た商売してるけど、おじさんのような気持ちもって仕事するね!」そう言ってタクシーを見送った。

 

 

 

ARIGATO☆ 

 

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